ここでは、AQUA プロジェクトが利用したネットワークについて総括する。図-1 は、2008年3月現在で、AQUAで利用できるインターネット環境を示している。


図 1: 2008年現在で AQUAが利用できるインターネット環境

 

まず、2006年度までのネットワーク環境を、簡単に説明する。
九州大学は図に示されるよう、SINET と QGPOP の二つのネットワークに接続されている。九大病院はもちろん、九州大学内に含まれている。QGPOPは、アジア、世界の研究・教育用ネットワークとの超高速接続を維持し、九州大学にその接続性を提供している。研究・教育用ネットワークとの接続性は、ネットワーク運用の観点で見ると、必ずしも安定しているとはいえないので、その接続性運用を研究プロジェクトであるQGPOPが担当することで、このあたりのネットワーク不安定さの影響が九州大学に及ばないようにしている。九州大学は、QGPOPを経由して到達できないネットワークには、SINETから到達できる。SINETも、研究・教育面に重点をおいているが、我々の意図・ポリシが反映できないので、実験は基本的にはQGPOPを利用している。

2006年までの状況を簡単に振り返る。2003年以前から、日本からアメリカ、台湾にはAPANによって、すでに研究・教育用の高速ネットワークが利用可能であった。2003年は、本プロジェクトが事実上開始された年で、APIIによって韓国と1Gのネットワークが利用可能になった。2004年はAPII(韓国と中国の高速接続)あるいはNICTの実験回線で中国と高速接続が実現し、中国と実験を行うことが可能になった。2005年は、NICTのJGN2国際回線がタイ、シンガポールに伸び、これらの回線を利用して、タイ、シンガポールとの高速実験が可能になった。

2006年になると、TEIN2が本格的にはじまった。NOCの存在する、シンガポール、香港とは620M、それらのNOCを経由してマレーシア、タイとは150M、ベトナム、インドネシアとは45Mの容量の回線が利用可能になった。またフィリピンとはTEIN2の枠組みを利用して、150Mの容量の回線が利用可能になった。また、オーストラリアは従来アメリカ経由で1Gの容量の回線が利用可能であったが、TEIN2によって、短い遅延時間で620Mの容量の回線の利用が可能になった。

しかし、これらはあくまで各国のTEIN2 NOCまでの回線速度であり、AQUAがパート名シップを結んでいる各国の組織との接続は必ずしも同じではなかった。その例をいくつかあげる。香港は、TEIN2のNOCが存在しているが、香港の組織を接続しているHARNETとTEIN2の接続速度が十分ではなく、AQUAのパートナである中文香港大学は、別にもっているCSTnet(1G)の回線を利用して中国経由で実験を行っている。同様に、シンガポールもSingARENとTEIN2の間の接続が高速ではないため、NUSとはJGN2の回線を使っている。タイとのJGN2の回線は、45Mしかなく、この回線上での実験が多いため、JGN2/TEIN2を状況によって切り替えて使った。

2007年は、AQUA の活動が欧米に広がった年でもあった。8月に西安であった APAN では、ドイツ、フランスが接続され、12月には九大病院とイタリアでデモが行われた。2008年の1月には、カリフォルニア大学のアーバイン校が接続された。これらのネットワークは、九大から SINET を経由し、SINET はアメリカのロサンジェルスとニューヨークに接続されており、アメリカ国内にはロサンジェルスから、ヨーロッパへニューヨークにて GEANT2 に接続されているので、この経路で通信が行われる。SINET のニューヨークまでも、また、ニューヨークからヨーロッパも 10Gbps の回線が用意されているので、容量的には全く問題ない。

2007年1月からインドが接続されるようになったが、インドはこの GEANT2 のイタリアから高エネルギー研究用のネットワーク ERNET を利用してムンバイまで 45Mbps の速度で接続されている。しかし、イタリアとムンバイの間のこの 45Mbps の回線の問題か、ERNET ムンバイ NOC の問題か、ムンバイ市内の問題か、TATA 病院内の問題か、まだ原因が突き止められていないが、現状 45Mbps のネットワークで、30Mbps の DVTS がパケットロスが少ない状態でも通信ができてない。これは、今後の課題である。


さて、国内に目を向けてみると、図-2 は AQUA の日本国内のパートナーシップを示している。


図 -2: 日本国内の連携

日本国内は、いくつかの異なる種類のネットワークを用いているが、主には JGN2、SINET3 そして、その他の回線(自治体の提供する回線、プレミアム網)である。札幌医科大、旭川医科大、岩手医科大、藤元早鈴病院は、JGN2を用いており、国立がんセンター、東京医科歯科大学、藤田保健衛生大学、長崎大学は SINET3 を、九州国際看護大学は福岡県が提供する福岡ギガビットネットワーク(FGH)を、そして、京都第2赤十字病院、豊見城中央病院は NTT西が提供するプレミアム網を用いている。いずれも、30Mbps の DVTS に耐えうる回線である。